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『キートンの大列車追跡』感想~世界三大喜劇王バスター・キートンの代表作

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出典:IMDb

世界の三大喜劇王と呼ばれる一人、バスター・キートンの『キートンの大列車追跡』を鑑賞。今までこの人の映像をチラ見したことは何度もあったけど、映画をちゃんと観るのはこれが初めてです。

ちなみに邦題は『キートン将軍』『キートンの大列車強盗』という名前も過去に付けられていたようです。では、感想です。

 

 

 

作品概要

THE GENERAL/1926年製作/アメリカ

監督:バスター・キートン、クライド・ブラックマン

出演:バスター・キートン、マリアン・マック、グレン・キャベンダー、ジム・ファーレイ 他

 

あらすじ

機関車ジェネラル号を恋人同様に愛する機関士ジョニー・グレイは、恋人を乗せた機関車を列車ごと北軍スパイに奪われて、彼女たちを奪回せんと獅子奮迅の大活躍をする。

allcinemaより引用http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=5127

 

感想

今まで観てこなかったことを後悔

率直に言って、とにかく面白かった!バスター・キートン天才じゃないですか。←今更

何故私はこれまで彼の映画を観てこなかったのだろう。観るチャンスはあったのに。某レンタルビデオ店でバイトしてた頃から、ずっと気になってはいたのだ。棚に並んであるキートン傑作集を眺めて、いつかは借りなきゃな、と。でも正直、まさかここまで色褪せない面白さのある喜劇役者だとは思っていなかった…。なんだか自分が恥ずかしくなるような思いです。 

(ちなみに、某レンタル店では何年もそのDVDを借りている人が居ない場合、売り場確保のために廃棄処分をしなければならなくて、キートン傑作集もそのリストに入っていたのですが、社員からその作業を任された私は「こういう作品こそ残しておかないといけないのではないのか」と御大層にも考え、独断でキープしたのでした(ある程度の裁量権はもらっていた)。自分は見てないくせに何を偉そうに言ってんだって感じだけど、今はそのときの自分を褒めてやりたいぜっ。)

話がそれたけど、本作『キートンの大列車追跡』はキートンの代表作だそうで、彼の素晴らしい魅力が特に詰まっている作品らしい。U-NEXTのおすすめに出てきた作品だったから視聴に至ったわけだけど、この作品から観て正解だったのかもしれない。

 

無表情の可笑しみ 

同じ時代の喜劇王、チャップリンが表情豊かな演技をするのに対して、バスター・キートンは徹底した無表情がトレードマークの役者のようだ。

映画を見始めて、品のある端正な顔立ちしてるな~と思っていたけど、その能面ヅラにこの人変わってるな…にすぐ変わっていったw どちらかというと、笑わないコメディアンのほうが好きだと自分で思ってたけど、この人の場合は群を抜いている。一気に好きになってしまいましたよ。

もちろん全く表情が変わらないわけではなくて、映画のなかで起こる様々なトラブルによってその能面フェイスが変化するさまがまた面白かった。驚いた様子を目だけで表現したり、基本的にこの人は目が武器なんだろうと思う。

表情だけではなく、道中に起こる様々な現象に戸惑って立ち止まって考える姿や、その佇まい、間の取り方など、そのすべてがもう天才コメディアンのそれで、幾度となく笑わされた。

南北戦争が始まって軍隊に応募する主人公キートンは、列車の運転手は今後必要だからという理由で落とされてしまう。だけどキートン自身はその理由を聞かされずに落とされてしまうため、他の男たちはみんなどんどん受かっているのに「なぜ自分だけ…」と疑心暗鬼になる。「体が小さいからダメなのか?」と思ってしまうキートンの可愛さよ。そして基本的に周りが見えてなさすぎるのも良い。この主人公は一つのことに集中するタイプの人なのだろう。

 

体はヒョロいのに身体能力抜群の活劇スター 

ジャッキー・チェンがバスター・キートンの影響を受けているということは聞いていたけど、この映画を観て超納得でした。

愛する人を乗せたまま北軍に乗っ取られて行ってしまった自分の列車を別の列車で追いかけ、様々な攻防を繰り広げていくわけですが、その中で自由自在に列車の上部を行き交うバスター・キートンの身体能力たるや…

棒っきれのような体のもやし系能面男が、身軽な体をヒョイヒョイと動かすため、観ている間はそこまで凄いことをしてるように見えないのですが、観終わって改めて考えてみるとこんなこと普通できないことに気付く。ずっと走りっぱなしの列車の上で撮影してるわけですからね。『ミッション・インポッシブル』シリーズのトム・クルーズの危険すぎるアクションシーンにお願いだから死なないでと願わずにはいれないけど、こんな昔にこれほど危険な生身のアクションを敢行していた人が居たとは…。しかもそれが能面の喜劇役者だなんて。畏れ入ります本当に。

列車での追跡と逃走、そしてヒロインの救出というハラハラ要素の詰まった活劇映画としても楽しめる。製作から93年後の今でもまったく色褪せないサイレント映画だった。

主人公キートンを手伝うヒロインが手持ち無沙汰になって列車をホウキで掃くシーンが好き。