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『きっと、うまくいく』感想 尻上がりに輝き始める映画

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(C)Vinod Chopra Films Pvt Ltd 2009. All rights reserved

2013年公開のコメディドラマ『きっと、うまくいく』を鑑賞。

公開当時、周囲から良かったよとオススメされていたのにも関わらず、 インド映画に対する食わず嫌いでここまで先延ばしになっておりました。視聴前に2時間50分という長さであることを知り、また一瞬躊躇しましたが、どうにか視聴スタート。(そんななら観るなよという感じですが)

では、感想です。

 

作品概要

3 Idiots/2009年製作/170分/インド
監督:ラージクマール・ヒラニ
出演:アーミル・カーン、カリーナ・カプール、R・マドハヴァン、シャルマン・ジョシ他

 

あらすじ

超難関の名門工科大ICEに入学したファランとラージューは、そこで超天才の自由人ランチョーと出会う。彼らは、一緒にバカ騒ぎを繰り返しては鬼学長の怒りを買い、いつしか“3バカ”として札付きの問題学生となっていく。そんな中、ランチョーは天敵である学長の娘ピアと恋に落ちるが…。時は流れ、3人が卒業してから10年後。ファランとラージューは、行方知れずのランチョーの消息を知っているというかつての同級生と再会する。そして彼とともにランチョーを探す旅に出るのだが…。
allcinemaより引用

 

感想

名門工科大生の大学生活というものには興味を惹かれるも、ベタな笑いてんこ盛りな内容に、最初は正直、「このノリがあと2時間以上も続くのかあ…」とちょっと辟易していました。やっぱり普通に挿入されてくるミュージカルパートも、死んだ目で眺めるという始末。学歴社会の圧迫による学生の自殺という社会問題も描かれますが、やはりその後もノリは変わらず、主人公たちのイタズラがベタな笑いを交えて繰り返されるので、長さを感じてしまいます。

ところが、次第にこの映画のベタな明るさが、人生の苦味や苦しみを生き抜くための明るさなのだということが分かってきて、そこから途端に映画が輝き出す。自殺未遂で全身麻痺となったラージューに、ポジティブな嘘を並べ立て、明るく励ますシーンが泣ける。本作の苦味を含めた明るさに、今の社会を本当に変えたいという気持ちが伝わってくるのだ。

子供たちにプレッシャーをかけ、苦しみを生む学歴社会の代償に遂げられる国の発展。急速に新興国となったインドという国の社会問題を扱い、インドの裏と表が見えるようです。実際にインドの学生の自殺率は高いらしい。でも、ここまでとは行かずとも日本もこの映画で描かれたような問題は抱えていたりするし、これから先進国へ近づこうとするどの国も経験し得るようなことだよなあと思いました。

同時に、勉強が嫌いで、なるべく楽な道を選び、受験戦争とも無縁だった私みたいなのからしたら、勉強ができるだけうらやまし~って感情もなきにしもあらずw 

まあ、それは自業自得として、この映画のランチョーという天才かつ合理的なキャラクターには大いに学びたいものがあった。「機械」とは何か?という教授の問いに、誰もが分かる言葉で説明しようとするも、教科書的な正しさを求める学校の方針とは食い違い、教室を出ていくよう言われてしまう。一旦出て行こうとするランチョーだが、引き戻して教授に難しい言葉でとあるものの説明をする。それは「本」を学術的に説明したものだったが、教授は理解できず「もっと簡単に言え」と怒る。それに対しランチョーは「教授は簡単なのはお嫌いかと思ったので」と皮肉り、他の生徒たちから爆笑を得る。…こういう頭の良いウィットに富んだ皮肉で、上の者に対抗できる人には非常に憧れる。いつかこういうことを言ってみたいものだ。度胸もないとダメだけど。あと同時に「人に分からないと定義もムダだ」というランチョーの考え方も素敵だ。

他にも、制服を着て潜り込めば誰でも授業を受けられるという教えや、名前を覚えられてないことを良いことに、遅れて受け付けてもらえなかったテストの答案を混ぜたりと、知恵を働かせて物事に対処していくランチョー。倫理的にどうなんだって言われればそれまでだけど、ルールに縛られ頭でっかちになりがちな自分は、こういう頭の柔らかさを持った人の考え方は見習いたい。このランチョーという、本当に頭の良い人の柔軟性と合理的な考え方が詰まった映画でもあるので、その点でも楽しむことができました。

それにしてもランチョー役のアーミル・カーンの瞳の色が綺麗だったなあ。

 

きっと、うまくいく(字幕版)