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『クリード 炎の宿敵』感想~息子たちの意地のぶつかり合いに号泣した映画

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(C)2018 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. AND WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

ボクシング映画の金字塔『ロッキー』シリーズで、主人公ロッキーのライバルであり親友だったアポロ・クリードの息子、アドニス・クリードを主人公とした作品の2作目『クリード 炎の宿敵』。

前作『クリード チャンプを継ぐ男』の前に一度『ロッキー』シリーズを一気見して復習していたので、過去の因縁も踏まえつつ観ることができました。では、感想です。

  

作品概要

Creed II/2018年製作/130分/G/アメリカ
監督:スティーヴン・ケイプル・Jr
出演:マイケル・B・ジョーダン、シルヴェスター・スタローン、テッサ・トンプソン、フィリシア・ラシャド、ドルフ・ラングレン、フロリアン・ムンテアヌ他

 

あらすじ

世界チャンピオンとなったアドニス・クリードに、かつて試合で父の命を奪ったイワン・ドラゴの息子、ヴィクターとの試合の話が舞い込んでくる。ロッキーの反対を押し切り、父の仇をうつためアドニスは試合を受けることに決めるが…

 

感想(ネタバレあり) 

これは泣いた。恥ずかしながら声を出して号泣してしまいましたよ。

『ロッキー4』のアポロ・クリード対イワン・ドラゴ。かつての親同士の試合の結果、片方は父を亡くし、片方は母から捨てられてしまう。親の因縁マッチが息子たちに訪れるわけだけど、彼らにとってはそれはあくまで過去の話。彼らの戦う理由は自分自身の存在理由のためであり、リングでは互いの意地と意地だけがぶつかり合う。

もう、最後のこの試合のシーンが、この映画の全てだった。

ドラゴ息子の意地に号泣し、それを迎え撃つアドニスの意地によって涙腺がさらに崩壊し、気持ちと気持ちのぶつかり合いに震えずにはいられない。

特にドラゴ息子よ、君は頑張った!(そして最後にドラゴ父のとった行動に救われた)

正直いま思い出しながらも泣いてるわけですが、『ロッキー』一作目も何度見ても泣けるけど、この映画もそれと同じくらいに感情を揺さぶられる作品になっていました。

 

映画全体でいうと、そんなに好みの映画かというとそうでもなかったりして、主人公アドニスの魅力がもうちょっと欲しいと思ったりはする。ロッキーの(特に1,2作目の)フィラデルフィアの気の良い兄ちゃんなキャラクターが好きだから余計になんだと思うけど、アドニスはネガティブすぎてうだうだしてる時間が長いのがね。でもまあこれも次世代のシリーズとして現代的なものを象徴するキャラクターになってるのがこの映画の良さなのだろうけど。(多分、ノーラン映画の主人公的なお堅くジメジメしたキャラクターがどうも好きになれないタチなのだと思う)

一方で、ロッキーとの過酷なトレーニングの末の「出来上がりました!」感満載の顔つきはかっこよかった。あと、プロポーズの練習してるシーンは可愛いかったな。ロッキーの動物園でのトラ前プロポーズの話も聞けて何だか泣けたし。最終的に「自分の心で話せ」ってアドバイスするところがロッキーらしくて好き。

 

そしてこの映画は父子の物語でもありながら、母親の対比にもなっていて、自分の息子を自立した男として応援しつつ温かく見守るクリード母は、まさに母親の理想像なんじゃなかろうか。あくまで本人の強さを信じつつ、サポートのためにロッキーを呼んだり絶妙の距離感で息子を支えるパーフェクトな母。政治家のドラゴ母とは雲泥の差だ。

あと今回も含め『ロッキー』シリーズは、プロモーターによるマッチメイクの思惑みたいなところも毎回描かれているけど、これは一作目のアポロとロッキーの試合の成り立ちがそういうところから始まってるから全作共通してそうなのかなと思った。アポロとか、そういう面での自己プロデュースに長けた人だったし。父親世代はみんなキャラクターが全然違うのも面白く、ドラゴは今回完全にこじらせ系だった。

『クリード』シリーズで気になるところは、『ロッキー・ザ・ファイナル』で最終的に息子とは和解できてたはずなのに、このシリーズになってまたロッキーと息子との埋まらぬ距離が描かれているところ。このシリーズのための設定って感じがしてちょっとそこだけ違和感を感じてしまう。他の面ではシリーズを上手く引き継いでるだけに気になってしまうところだ。

まあ、でもとにかくファイトシーンが素晴らしく、かつてPRIDEファンだった私は、そうそうこれが格闘技の醍醐味なんだよおおおと熱い気持ちを取り戻すことができた。