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『リヴァプール、最後の恋』感想 ジェイミー・ベルのダンスも見れるよ

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 『リヴァプール、最後の恋』。

往年のハリウッド女優グロリア・グレアムをアネット・ベニングが演じ、彼女と恋に落ちる若手俳優ピーター・ターナーをジェイミー・ベルが演じた歳の差ラブロマンス。ピーター・ターナー自らによる回顧録を映画化したものらしいです。 

では、感想です。

 

作品概要

Film Stars Don't Die in Liverpool/2017年製作/105分/アメリカ
監督:ポール・マクギガン
出演:アネット・ベニング、ジェイミー・ベル、ジュリー・ウォルターズ、ヴァネッサ・レッドグレーヴ他

 

あらすじ

1981年9月29日、ピーター・ターナーの元に衝撃の知らせが飛び込んできた。かつての恋人グロリア・グレアムがイギリスのランカスターのホテルで倒れたのだという。
「リヴァプールに行きたい」そう懇願するグロリアに対してピーターはリヴァプールにある自分の実家でグロリアを療養させることにした。ピーターの家族やリヴァプールを懐かしむグロリアだったが、全く病状を明かそうとしない。心配になったピーターは、アメリカの主治医に連絡をとり病状を確かめた。そして、グロリアの死が近いことを悟ったピーターは、不意に彼女と楽しく過ごしていた頃を思い出すのだった。最後までグロリアがリヴァプールに拘り続けた理由とは―
公式サイトより引用

 

感想

アネット・ベニングとジェイミー・ベルの歳の差恋愛ものだと!?最高ですやん!というテンションで手を伸ばした作品のため、実話をもとにした話だとは全く知らずでした。不勉強ながらグロリア・グレアムという女優さんについても知らず。映画の途中の「彼女オスカーも獲ってるよ」というパブのおじさんの台詞で、「おや?実在した女優の話なのか?」と感じ始め、実際のオスカー受賞シーンでやっとやっぱそうだったのかとなりました。

大女優と若手俳優の恋というと、映画や舞台で共演してロマンスに発展したのかなと思うけど、この二人の場合はアパートのお隣さんだったことがきっかけ。男のほうは駆け出しの舞台俳優で、若いため往年のハリウッド女優である彼女のことは知らなかったけども、同じ俳優同士ということで意気投合して仲良くなっていく。

俳優同士の恋でありながら、誰にでもありそうな普通の出会いなのが良いじゃないですか。こういうの良い。二人とも演じることが好きで、映画や舞台が好きで、その共通点から距離を縮めて恋仲へと発展する。なんだか思惑がなくて良いのだ。

ピーターくんは最初にアパートの管理人から「昔は有名だったけど今は落ち目だ」という話を聞かされていたため、多分逆に彼女と接しやすかったんだと思う。大女優なんて普通気が引けるだろうし。そして、仲良くなってから「彼女オスカー女優だよ」と聞いたときのピーターくんの反応がいい。帰りのバスの中で急に喋らなくなってしまうのが超リアルだ。気後れしてるのか動揺を隠せないのか分からないけど、こういうとき人は無言になってしまうものだよね。で、彼女にどうしたの?って聞かれて、ロバート・レッドフォードを気取ってやり過ごすのもまた憎い。演技好きな俳優同士ならではのやり取りがいっぱいあって二人がかわいく見えるんだよなあ。

 

そして!グレアムさんの部屋で二人がディスコダンスを踊るシーン!!!

これは全世界の『リトル・ダンサー』好きへのサービスシーンですか!??

かつてバレエ少年ビリー・エリオットを演じたジェイミー・ベルのダンスは今でもやはり流石のキレッキレ。本領発揮をしてるのは短い時間でしたが、そのなかで抜群のリズム感と体のキレとバネを感じさせる動き。こりゃ俳優の動きじゃないぜ。もっと、もっとワシに見せてくれぃ…と思ってしまうのは贅沢なのでしょうか。今のジェイミー・ベルでダンスムービーをどうか。ダンスムービーじゃなくてもダンスが際立つミュージカルとかでも良いので!

嬉しいことにYouTubeにダンスシーンの本編映像がアップされていました。いつでも見れるように貼っときます。


「リヴァプール、最後の恋」本編映像

もっと全身を映すのだ全身を!と思ってしまうけど、まあそれはしょうがない。何度もリピートしてて思ったけど、ジェイミー・ベルの息切れの音までしっかり入れてるのは、もしかしたら『リトル・ダンサー』の怒りのダンスシーンのオマージュかもしれない。あれもビリー・エリオットくんの息切れの声が入ってたから。この監督最高じゃないか。

 

ついついダンスシーンに熱くなってしまいましたが、グロリア・グレアムさんのキャラクターもこの映画の見ものでした。年をとっても愛される女性の秘訣は、いつまでも可愛らしいことなのだろうなと。『20センチュリー・ウーマン』とは180度違うアネット・ベニングの演技に舌を巻く。60歳近くなっても「ロミオとジュリエット」のジュリエット役を真面目に熱望するグレアムさん。冗談で言っているのかと思ったピーターは「乳母じゃなくて?」と笑って返すが、グレアムさんは涙まじりに怒るのです。恋愛対象として見てたピーターくんからお婆さん扱いされた涙でもあり、彼女は永遠の少女なのでした。こういう人が可愛らしいのだということは分かっていても、真似ようと思ってもそうそう真似できないのさ。

映画にも挿入された実際のオスカー受賞シーンもかわいすぎるよね。不思議ちゃんぽい人でもあるのかな。


Gloria Grahame winning Best Supporting Actress

 

それからグロリア・グレアムさんが病床に伏す話でもあり、それを受け入れるのがピーターくんの実家なのですが、この二人は両親公認の仲だったらしい。普通、自分の息子に親子ほどの歳の離れた恋人(それも女優)を紹介されたら、そう簡単に受け入れられるものではないと思うけど、ピーターくんの両親の寛容さときたら。しかもこれは後で知ったけど母親役をやってたのは『リトル・ダンサー』でバレエの先生を演じたジュリー・ウォルターズだったようで。どれだけ『リトル・ダンサー』好きに目配せしてくれてる映画なのだこの映画は。

監督のポール・マクギガンは、『ギャングスター・ナンバー1』や『ホワイト・ライズ』(仏映画『アパートメント』のリメイク)の人だった。この2作も結構好きだったな。

音楽も良いし、ダンスシーンも良いし、役者も好きな二人の共演で楽しめました。ジェイミー・ベルを見るといつも、あのビリー・エリオットくんが!という感じで親戚のような目線で見てしまうのですが(特に『ニンフォマニアック』は衝撃だった)、もうすっかり素敵な大人の俳優になっている。声や喋り方もかっこいいし、朗読シーンなんかは聞き惚れました。