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『チャイルド44 森に消えた子供たち』感想 トム・ハーディのロシア語なまり英語

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少年たちを襲う連続殺人事件と、スターリン支配下のソ連の恐ろしさを描いた映画『チャイルド44 森に消えた子供たち』 を鑑賞しました。

原作は、2009年の『このミステリーがすごい!』で1位に選ばれたトム・ロブ・スミスの『チャイルド44』 というミステリー小説だそうです(未読)。では、感想です。

作品概要

Child 44/2015年製作/137分/アメリカ
監督:ダニエル・エスピノーサ
出演:トム・ハーディ、ゲイリー・オールドマン、ノオミ・ラパス、ジョエル・キナマン他

 

あらすじ

1953年、スターリン政権下のソ連で、子供たちの変死体が次々と発見される。年齢は9歳から14歳、全裸で胃は摘出され、山間にもかかわらず死因は溺死。だが、“殺人は国家が掲げる思想に反する”ため、すべて事故として処理される。秘密警察の捜査官レオは親友の息子の死をきっかけに、事件解明に乗り出す。捜査が進むほどに、国家に行く手を阻まれ、さらに、愛する妻にも不当な容疑が。真実が容易に歪められるこの国で、レオは真犯人に辿り着けるのか──?
公式サイトより引用

 

感想

ソ連時代のウクライナやモスクワが舞台だというのに、全編英語で通されるのでその時点でちょっと残念感は出てしまいますが、トム・ハーディが健気にロシア語なまりの英語の役作りをしているので泣けました。昨今はちゃんとその国の俳優を使ってその国の言語で作られる作品が多くなっているので、久しぶりに全編英語で押し通される違和感を味わいどうしても気になってしまった。でも原作がロシアで発禁処分になっているというのでロシア人俳優を使うのも難しかっただろうなとも思う。(この規模の映画で無名のロシア人俳優を使う選択肢はそもそもなかっただろうなとも思うけど)

こういうとき役者はどんな気持ちなのだろうと思ってしまう。ほぼ全員がロシアっぽい感じの喋り方をしていたけど、先に書いたようにトム・ハーディのロシア語なまり英語は徹底されていて、少しでも役にソ連の血を入れようとしている姿勢が見える。私はアレクサンドル・ソクーロフ監督の作品が好きなんでロシア語の独特の喋り方にも愛着があるほうなんですが、聞いてるとちょっと眠くなる感じというか、気だるさと親密さの両方がある感じの特徴をめちゃくちゃ上手く捉えていたと思います。『ブロンソン』とか観ても役作りへの執念を感じたし、さすがの変幻自在俳優ですね。

 

映画の内容の本題に移ると、スターリン政権下の連続殺人事件ということで、なんだかややこしそうだなと思って今まで視聴に至らなかったわけですが、実際結構ややこしくて特に最初の1時間くらいはなかなか集中できませんでした。

原作も上下巻のミステリーなので、この内容を2時間強の映画にまとめるのにだいぶ苦労したのではないかと思います。ソ連という国はユートピアなんだから、殺人事件なんて起こるわけがないと言って、子供たちの連続殺人が事故として処理されてしまうという、かつてソ連で起こった実際の出来事をベースに書かれたのが原作小説らしいです。

MGB(国家保安省)という秘密警察の捜査官(トム・ハーディ)が、妻のスパイ容疑によって地方の警察官へと格下げされ、殺人事件の捜査をすることになるのですが、スパイ容疑の件と殺人事件の無視という全体主義国家の闇に加えて、当の犯人探しや、ちょっとしたアクション、妻と夫の愛情などなど、とにかく要素が多すぎた。原作は未読なので何とも言えないですが、もう少し要素を削って映画用にスリムに見せてほしかったです。例えば、ジョエル・キナマン演じるワシーリーという体制側の男は、そんなに複雑なキャラクターにせずとも良かったのではないかと。

とにかく色んなもののごった煮が整理されていなかったので、非常に観にくいなという印象が強かった。製作を務めたリドリー・スコットが元々監督する予定だったみたいなので、リドリー・スコット監督版で観てみたかったのが正直なところ。

とはいえ、スターリン政権下のソ連の実情を知れる映画として面白かったので観て損はなかったです。

ラストに体制が変わったのは、本作の時代設定が1953年でスターリンが亡くなった年だったからのようで納得。しかし、殺人犯の衝動を西側諸国の責任にするのは相変わらずで、完全には変わらないところも示されていた。現在のロシアでこの原作が発禁本になっているということも後で効いてくる映画でした。

 

原作本はこちら↓

チャイルド44 上巻 (新潮文庫)

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