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『ブロードウェイと銃弾』感想 ウディ・アレンが描く内幕もの

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出典:IMDb

ブロードウェイの内幕ものコメディ『ブロードウェイと銃弾』。

94年製作のウディ・アレン作品で、アカデミー賞に6部門ノミネート、ダイアン・ウィーストが助演女優賞を受賞した映画です。

 

作品概要

Bullets Over Broadway/1994年製作/アメリカ
監督・脚本:ウディ・アレン
出演:ジョン・キューザック、ダイアン・ウィースト、ジェニファー・ティリー、チャズ・パルミンテリ他

 

あらすじ

主人公のデビットは若い劇作家。新作の上演が決まったまではよかったが、彼には次々と思いがけない問題が降りかかる。ギャングの顔役に演技力ゼロのショーガールを押しつけられ、主演女優をめぐる三角関係の愛に悩み、脚本のリライト騒動がおき、やがて殺人事件にも巻き込まれていく……。
allcinemaより引用

 

感想(ネタバレあり)

ウディ・アレン自身が主演じゃないアレン作品って、だいたいいつもコメディ色弱めのものが多い印象だけど、本作は程よいコメディタッチとシナリオの妙が結合した「誰もが楽しめるウディ・アレン映画」と言える作品だったと思います。面白かった!

新人の劇作家がブロードウェイでの上演を取り決めるも、彼にお金を出資してくれたのはまさかのギャングの親分。結果、彼のオンナである無教養なショーガールに精神科医の役をあてがわなければいけなくなる。しかもオンナに悪い虫が付かないように、ギャングの部下がリハーサルへ毎度付き添ってきて脚本に文句を付けてきやがる…

最初は観ながら、このギャングの部下であるゴロツキに嫌気が差すんですよ本当に。短気ですぐキレて、いちいち口を挟んできて、芸術家の大切な舞台を壊そうとする。ケッて感じなんですが、このゴロツキが意外にもシナリオを読む力があるんですよ。彼の「こう変えたらいいじゃないか」という言葉が停滞していたシナリオを動かし始める。最初は役者たちがそれいいね!ってなってたのを不服に思う劇作家も、次第に彼にアドバイスを求めるようになり、果てはほぼほぼゴロツキの案で構成された脚本へと生まれ変わっていく…

しかも、ここから映画の最後のところまで書いてしまうけど、最初は舞台になんかまったく興味のなかったこのゴロツキが、自分が作ったこの脚本に愛着を示し出し、この作品を完璧な状態で舞台にかけるために、演技がド下手なショーガールを殺してしまいます。自分の親分のオンナを殺すんですよ。そしてそのことによって親分に命を狙われても、最期まで「あそこをこうしたら良くなる…」と劇作家に脚本の手直しを託して息を引き取るという…

彼の作る完璧なシナリオに、それまではアーティスト志向の強かった劇作家も自分の才能のなさを自覚して最後には廃業を決意します。

理屈屋の劇作家と、シンプルに生きるゴロツキ。この2人が一緒に脚本を考えてる姿も微笑ましいし、芸術家に対するアイロニーも含まれていて非常に面白かったです。

映画鑑賞を趣味とし映画まみれで生きてるような者にとっては、このゴロツキをいつの間にか愛さずにはいられなくなるはず。舞台になんかまったく興味なかったくせに、次第に人生を舞台に捧げて亡くなるという生き様。演じたチャズ・パルミンテリも大好きになってしまいましたよ。

ウディ・アレンの分身として御託を並べる劇作家を演じたジョン・キューザックも良かった。ジョン・キューザック好きだわやっぱり。あの卵顔がなんとも言えない。若い頃は特にかわいくて良いな。意外と背が高いのも良い。

ジョン・キューザックが恋してしまう大女優にはダイアン・ウィースト。このTHE女優という半ば戯画化された大げさな女の役をダイアン・ウィーストが絶妙のニュアンスで体現。上手いわ~。

他にも、演技は達者だけど、お菓子に目がなく本読みから開演までのあいだにブクブクと太っていってしまう英国人俳優も良かった。男のコルセットは初めて見たゾ。

声も最悪で演技も下手なショーガール、結果殺されてしまう彼女の代役にちゃんとした舞台女優が配役されれば、本当に舞台がグッと良くなっていて笑ったw 本当に精神科医がそこに見えたよ。チャズ・パルミンテリがショーガールを殺した意味はちゃんとあったよ。

ギャングのボスも良かったな。ジョー・ヴィテレッリ。関係ないけど、この人は私が初めて就職した中小企業の社長にそっくりだ。ちょっとチャーミングなボス顔。

 

ブロードウェイと銃弾 (字幕版)