ジョーカーだけじゃない!ヒース・レジャーの魅力が詰まった6作品
2008年夏、日本での『ダークナイト』公開の初日、その年に亡くなった故ヒース・レジャーのジョーカーを観るために映画館へ行った私はたまげました。
「ヒース・レジャー、どこにも居ないじゃん…!」
喋り方、笑い方、声の出し方、身のこなし…それまで私が大好きだったはずのオーストラリア人俳優の面影はまったくなく、そこに居たのは徹底して作り込まれた「ジョーカー」という悪のキャラクター。もちろん顔をメイクで覆っていることも大きいけど、骨の髄までジョーカーという役になりきったヒース・レジャーは、それまでの出演作とは一線を画す演技を見せ、映画全体を支配していました。
のちにヒースはこの演技でアカデミー賞助演男優賞も受賞し、いまやヒースジョーカーは映画史に残る悪役として多くのファンを持つキャラクターとなっています。
だけど、そこに一抹の淋しさがあるのも本音です。何故ならジョーカーは、ヒース・レジャーの別の魅力がごっそり抜け落ちたキャラクターとも言えるから。まあ、当然と言えば当然です、あれだけ特殊な役柄なので。確かにジョーカーは凄い。凄いけど同時に、ヒース・レジャーの真骨頂はジョーカーとは別のところにあるとも思っています。
前置きが長くなってしまいました。とにかく私はヒース・レジャーの演技が好きなので、まだ『ダークナイト』しか観てないっていう人にも、こんな作品があるよ!って紹介したいのです。紹介させてください。
作品のチョイスは完全に私の独断と偏見です。
- 『チョコレート』(2001年)
- 『ROCK YOU! ロック・ユー!』 (2001年)
- 『ヒース・レジャーの恋のからさわぎ』(1999年)
- 『ロード・オブ・ドッグタウン』(2005年)
- 『ブラザーズ・グリム』(2005年)
- 『ブロークバック・マウンテン』(2005年)
- まとめ
『チョコレート』(2001年)
ハル・ベリーとビリー・ボブ・ソーントン共演の恋愛ヒューマンドラマ。
親子三代で刑務所の看守を務めるアメリカ南部のある家族。差別主義者の父親ビリー・ボブ・ソーントンの息子役を演じたのがヒース・レジャーで、出演時間は短いもののそのなかで強烈な印象を残しています。後述する『ロック・ユー!』で既に「かっこいいし良い演技する人だな~」とは思ってはいたけど、ここまでの若手実力派だとは思っておらず、この作品で初めて私はヒース・レジャーの演技力を目の当たりにしました。細かい背景の説明もなく、台詞も少ない役だけど、ヒース・レジャーの内側に根差した演技によって彼の感情が痛いほどに伝わってきて、涙なしでは見られなかった。
『ROCK YOU! ロック・ユー!』 (2001年)
中世騎士ものに現代的要素を入れ込んだノリの良い歴史娯楽作。ジュースティング(馬上槍試合)という競技の戦いに挑む主人公たちが描かれています。
本作でのヒース・レジャーはとにかくかっこいい。真っ直ぐストレートな若者を爽やかに演じていて、ヒース・レジャーのフィルモグラフィーでは珍しい王道キャラクターです。とあるシーンで流すヒース・レジャーの涙に感情を揺さぶられたりもします。ヒース・レジャーが流す涙はいつも美しい…。正直ヒロインがいまいちだったり、細かいところで言いたいことはある映画ですが、気にせず観るのが良いでしょう。
『ヒース・レジャーの恋のからさわぎ』(1999年)
シェイクスピアの『じゃじゃ馬ならし』を基にした学園ラブコメディです。ちなみにソフト化する前の邦題は『恋のからさわぎ』。
ヒース・レジャーのラブコメが観れるのは日本では現状これだけ。しかもこの作品がとても良い仕上がりのキュートでのほほんとした学園ラブコメとなっており、個人的にも大好きな作品です。ヒース・レジャーが演じるのははみ出し者の不良学生。男嫌いな堅物女子(ジュリア・スタイルズ)を振り向かせるため試行錯誤している内に、次第に本当に恋が芽生え…というようなお話。クールだけどお茶目で優しいヒース・レジャーがたまらん映画となっております。彼女とのやり取りの一つ一つで変化していくヒース・レジャーの表情が良いのです。校内放送で歌うシーンもあり、こんなヒース・レジャー他では見れません。
しかもまだ若くてイモっぽさの残るジョセフ・ゴードン=レヴィットも共演してるときた。こりゃ神映画だ。
『ロード・オブ・ドッグタウン』(2005年)
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70年代に活躍した実在したスケボー少年たち“Z-BOYS”を描いた青春ドラマ。
ヒース・レジャーが演じるのは彼らの兄貴分的存在のサーファー。ボード販売に利益を見出し、彼らのチームを作るんですが、少年たちが成功するうちにどんどん立場が弱くなっていき他のチームの引き抜きなどに狼狽する姿がなんとも侘しくも愛すべきキャラクターでした。分かりにくいけど、付け歯をしてちょっと出っ歯気味な役作りをしています。実はこういうハイな大人をやるのもヒース・レジャーにしては珍しい。絶妙な小物感を演じていました。
『ブラザーズ・グリム』(2005年)
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グリム童話で有名なグリム兄弟を主人公にしたコメディ色強めのファンタジー作品。ちょっと期待外れ感もあったテリー・ギリアム監督作ですが、ヒース・レジャーは良かったので紹介。
まずマット・デイモンとヒース・レジャーの兄弟が意外にも良いコンビで良かった。マット・デイモンのほうがモテ役で、ヒース・レジャーのほうがオタクっぽい役というのが良いじゃないか。ストレートに配役したらイメージ的には逆だと思うけど、ヒース・レジャーがこういう役も上手いのを証明しているし、めがねもすごく似合っていた。しかもこの兄弟、二人ともがビビリでヘボいキャラなのだ。それが良かった。
『ブロークバック・マウンテン』(2005年)
最後はもはや説明不要の名作『ブロークバック・マウンテン』。カウボーイの二人の恋愛を描いたアン・リー監督作品です。
これは男性同士の同性愛ものとして、ちょっと敬遠しているような男性諸君にも一度は観てもらいたい映画。恋愛に男も女もないっていうのもそうだけど、この映画は一人の不器用な男の物語でもあるからです。ヒース・レジャー演じるイニスは過去のトラウマや男らしさに囚われていたり、人としての不器用さに苦しみ続ける男として描かれている。なので、最初は抵抗感を感じたとしても、普遍的な話として受け入れられるんじゃないかなって思います。
そしてこの映画のヒース・レジャーはそんな男の弱さを見事に表現しています。本当に素晴らしい演技で、私にとってのヒースのベストアクトはジョーカーではなく本作のイニスです。
まとめ
『ブロークバック・マウンテン』が一番良い例かもしれないんですが、結局、私が思う彼の一番の魅力は、「男っぽい見た目に反した、内面の繊細さ」なんですよね。それがほとんどの出演作に貫いているヒース・レジャーの個性だと思っています。もう、私はこのヒース・レジャーの個性がたまらなく好きなんだ。この記事を書くために何作か観直したけど、やっぱりこういうヒース・レジャーに心を動かされる。
ジョーカーも凄いけど、ヒース・レジャーを思い出すときに胸を締め付けられるのは、こういう彼だからこそなのだろうと思っています。
ホアキン・フェニックス版のジョーカーも公開が近いこともあり、ヒース・レジャーのことをどうしても思い出してしまう今日この頃なので、こんな記事を書きたくなりました。
そしてここに紹介しきれなかった作品もヒース・レジャーが魅力を放っている作品はたくさんあります。生前ヒース・レジャーって「映画自体はいまいちだったけどヒース・レジャーは良かったな」っていうふうに思わせてくれることが多い俳優だなっていう認識が強かったんですよねw
もし生きていたら40歳になっているはずで、きっとたくさんの素晴らしい演技を見せてくれてたんだろうなって何度も思ってしまいますが、残念ながらそれは叶わない夢。28歳までの彼が残してくれた作品を観れば、何度も会いに行けるのが救いです。
(ちなみに6作という何とも中途半端な数字なのは、本当は5作紹介するつもりが計算ミスで1本増えてしまったからでした…)