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『ペット・セメタリー』感想~子役ミコ・ヒューズのコワ可愛さと親父の心理

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出典:IMDb

怖くはないけど、人間のどうにもいかない心理をついていたホラー映画『ペット・セメタリー』(1989)。スティーヴン・キング原作・脚本です。

 

作品概要

Pet Sematary/1989年製作/アメリ
監督:メアリー・ランバート
原作・脚本:スティーヴン・キング
出演:デイル・ミッドキフ、デニース・クロスビー、フレッド・グウィン、ミコ・ヒューズ他

 

あらすじ

幼い子供を二人抱えた一家の引越し先の目の前にあったのは、大型トラックが昼夜問わずに行き交う道路。トラックに轢かれるペットがあまりにも多いため、近くにはペット霊園なるものが作られていた。しかしその霊園の先には、いわくつきの奇妙な力を持った埋葬場が存在していた…

 

感想(ネタバレあり)

幼児が二人いるのに、引越し先には目の前に危ない道路。お父さんが一人で決めた物件らしいけど、何故もっとしっかりと下見をしなかったのかと問いたい。冒頭からトラック危ないよーとひやひやしたけど、もうここからその後の悲惨な事故の伏線となっている。しかも、この二度とも両親がお姉ちゃんに気を取られて、2歳くらいの息子の目を離しているのだ。

自分の話になるけど、幼いころ家族と海に行って溺れたときのことを思い出した。海の中で急に足が付かなくなってしまった私は、まだ泳ぎのできない年ごろで、ゴボゴボと必死になって家族の助けを求めていた。しかし、もがきながら私の目にうっすら見えた光景は、浮き輪を付けた兄と両親がアハハウフフと楽しそうに海遊びに興じている姿。すぐ近くで溺れている私には誰も気付く様子がない。生まれて初めて絶望を感じた瞬間だった。結局どうにか自力で足の付くところまで移動でき事なきをえたのだが、最後まで誰にも気付かれず人知れず溺れていたやるせなさ。兄と両親のあの楽しそうな顔は今でも鮮明に脳裏に浮かぶ…(ちなみに浮き輪は元々1個しかなく、最初私が付けていたけど兄が借りていったのだった)

小さい子供が2人以上居ると大変なのは分かるけど、この映画の両親は2回も同じミスしてるからフォローのしようがない…

 

物語としては、死んだペットを蘇らせてくれる埋葬場があって、そこへ交通事故で亡くなった幼い息子を埋めて生き返らせてしまう父親の話なのですが、そこに埋められた者は姿は同じでも中身がゾンビみたいになってしまって、さて大変という映画でした。

 

そして、その息子役を演じたのがミコ・ヒューズ君。

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出典:IMDb

蘇ってからの表情がとにかく良いです。この歳でどうやったらこんな顔ができるのか。父親にトドメの注射針を刺されると「あああああぁぁぁ」と叫びながら、迫真の演技。

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出典:IMDb

しかも同時にかわいい。とてつもなくかわいい。刺されたあとの表情が特にかわいくて、父親に死ぬ前の健全だった息子を思い出させて亡くなります。おもしろ怖かわいいの三拍子が揃っていて私的には最高のシーンだった。

このミコ・ヒューズ君は、ブルース・ウィリス主演の『マーキュリー・ライジング』も良かったんだよな~。自閉症の少年を他にはない独特の雰囲気で演じていたのが印象的だった。

 

そして、蘇らせたら別人になってしまうと分かっていたのにも関わらず、かわいい息子を失った父親はその禁じ手を使ってしまうわけですが、これがもし自分だったらどうするかと考えさられたりもする。もし生き返らせる手があるなら、それが危なくてもやってしまうものかもなと。

しかしこの父親は、その蘇った息子によって愛する妻も殺されてしまったのに、今度はまたその妻を埋めて蘇らせるから笑った。「前回(息子のとき)は埋めてから待ちすぎたのが良くなかったんだ」とか言って(笑)

でもこれも、人間って都合のいいテキトーな理由をこしらえるものだよな、と何だか妙に納得させられるものがあって、人の心理を面白く描いている映画だと思いました。

案の定ゾンビになった妻に殺されるところまで描かれ、陽気なエンディング曲で締めたように、笑えるニュアンスがあったのも良かった。