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『万引き家族』感想~えらいぞ!祥太

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(C)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

万引き家族』を鑑賞。

是枝監督の作品は2004年の『誰も知らない』しか観たことがなかったことを今知って自分で驚く。話題作も多くて色んな情報が入ってくるので、勝手にもっと観ている気になっていた…。決して避けて通っていたわけではないです。

ということで、感想です。

 

作品情報

製作年:2018年
製作国:日本
上映時間:120分
配給:ギャガ
監督:是枝裕和
出演:リリー・フランキー安藤サクラ樹木希林松岡茉優、城桧吏、佐々木みゆ 他

 

あらすじ

古びた平屋に暮らす5人の貧しい家族。彼らは年金や給料では足りない生活費を万引きで補っていた。ある日、団地の廊下で一人で震えていた少女を連れ帰り、新しい家族として一緒に生活することになるが…。

 

感想(ネタバレあり)

率直に言って、とても良かったです。カンヌでパルムドールを受賞していて、あれだけ色んなところから賞賛されている映画なんで、いまさら感がありますが、それを踏まえた上でも自分の口から良かったと言いたくなるようなところのある映画でした。

社会や本当の家族からつまはじきにされた人達が構成する6人の疑似家族。その暮らしは、利害関係と情で成り立っています。ときに残酷さが見えたかと思いきや、ときに美しい愛情が示され、一言では言い表せない家族の形が見えます。

色々問題ありだけどみんな楽しそうだし幸せそうだな、とか思っていたら、それも本当のものだったのか?と思わせるような事実が明らかになったり、でもやっぱりちゃんと愛はあったというふうにも思えたり。

是枝監督は観客に押しつけず、そこにある事実を提示して観る者に多くをゆだねるスタイルなので、物語に分かりやすく白黒つけないところが良いですね。(もちろん、そこに描かれているものはすべて監督の意図のもとにあるので、少なからず誘導はあると思いますが)

人の行動の意味やそこにある感情は誰にも推し量ることはできないし、表面的に判断することはできない。残酷さの一方で、確かな愛もある。

こういうことは、映画によって学んできたような気がします。良い映画はだいたいそういうことを描いているものが多いので、映画を観て、人間は一面的ではないのだという考えが叩き込まれるのでしょう。

本作では、各キャラクターにそれぞれラストシーンが用意されているんですが、色々あったけどそこにあるものがすべてだなと思いました。この登場人物たちは、楽しかった思い出や、確実にあったはずの愛情に目を背けずに心で感じていることが素敵でした。

そして是枝監督は、役者を自然に撮るのが本当に上手い人ですね。演出の自然さと言ったほうがいいのか。

安藤サクラなんて、ほんとにこの世に存在する人にしか思えない。今までの人生で絶対どっかで出会ったことのある人だわあの人。お客さんのポッケに入ってたものをくすねたときの感じとか、ああ、こういうタイプの人は絶対こういう顔してこういう仕草するよねっていうのがよく出てた。『百円の恋』を観たときも感動したけど、本当にすごい女優だわ。

言わずもがな、子供たちも素晴らしかった。

城桧吏くんが演じた祥太は、自分の判断であの生活を終わらせて、本当に賢くて勇気のある子だと思った。幼い子供は親(大人)が言うことはすべて正しいと思っているもの。でもだんだんと成長してくると「あ、親(大人)って思っていたほど完璧じゃないんだ」っていうことに気付いてくる。そして「間違っている」と自分で感じ始めると子供はその生活下に居るのが本当にしんどくなってくるものだと思います。子供は大人が思っているより敏感に色んなことに気付くし、不安定な状態には焦燥感を募らせる。そこで生活する苦しさと言ったら…。でもこの祥太くんはそれを自分の判断で打破したところが偉いしかっこいい子だと思いました。しかもりんちゃんのために。良い子すぎる。

是枝監督の作品、もっと観よ。