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『アンセイン 狂気の真実』感想~全編iPhoneで撮影。あのホラー映画の引用も?

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スティーヴン・ソダーバーグ監督によるサスペンススリラー『アンセイン ~狂気の真実~』の感想です。

 

作品情報

原題:Unsane
製作年:2018年
製作国:アメリ
上映時間:93分
配給:劇場未公開
監督・撮影・編集:スティーヴン・ソダーバーグ
出演:クレア・フォイ、ジョシュア・レナード、ジェイ・フェイロー他

あらすじ

ストーカーのデヴィッドという男につきまとわれ、母親に本当の理由を告げずに引っ越して新たな生活を始めたソーヤー。だが精神的に追い詰められた日々は変わらず、ある日、とあるカウンセリング施設を訪れてカウンセラーと話をするが、強制的に入院させられることに。彼女は警察に助けを求めるが、警察も周りの看護師も取り合ってくれない。あげくの果てに、人を殴ってしまい入院期間が延長されてしまう。さらに、彼女の前にあのデヴィッドが職員として現れるのだった……。

公式サイトより引用http://www.foxjapan.com/unsane-jp

 

感想(ネタバレなし)

全編をiPhoneで撮影した意欲作

ストーカー被害によるトラウマが治らずカウンセラーのところに行ったら精神病棟に強制入院させられ、しかもそこにストーカー男が職員として居たっていう悪夢のような話。 

ソダーバーグ監督自ら全編をiPhoneによって撮影した意欲作です。

 

オーシャンズ11』シリーズ、『エリン・ブロコビッチ』『トラフィック』『セックスと嘘とビデオテープ』などなど、ソダーバーグは結構いろんなタイプの作品を撮るので、ものによってはあまり好みじゃないのもありますが、『セックスと嘘とビデオテープ』『サイド・エフェクト』あたりが個人的にはとても好きな作品でした。

 

そんなソダーバーグによる本作は、まあ、内容としては割とよくある感じのサイコスリラーで、何よりまず作るときに「iPhoneで撮るための映画」というのが念頭にあったんだと思います。そのためのジャンル選定。

やっぱりホラーとかスリラー系の映画だと、荒い質感の画面が生きるんだと思います。

言ってしまえば、低予算でも機材もなくてもiPhoneだけで及第点の映画は撮れるんだぜっていうソダーバーグによる証明でしょうか。だからあえて奇をてらった内容にしなかったと言えなくもありません。

実際、ちょっとしたドキュメンタリーっぽさや、精神病棟の閉塞感などが画面から滲み出ていて観る側も息苦しくさせるようなものがありました。

こういうふうに撮るんだっていうのをもっと注目して観れば良かったと今少し後悔してます。

 

感想(完全にネタバレ)

冒頭はサム・ライミ監督『スペル』を引用か

この手のストーリーの映画って、だいたい「主人公が正しいのか、もしくは主人公がおかしいのか」で引っ張っていくものが多いと思うんですけど、この映画は意外に早く本当にストーカー男だったっていうのが明示される作りになっていて、私はそれが良かったです。今さらその引っ張り方されてもなんかもうどっちでもいいよって気になるし。

ストーカー男は母親や潜入記者(あとでわかる)など主人公の近くに居る人間を殺していきますが、別名でなりすましていた男も殺していたということがあとで分かります。接近禁止令を出されてるから名前を変える必要があったんでしょうが、あれって主人公が強制入院されてるところをストーキングして見ていて、チャンスだ!と思って人を殺して名前を借りて施設に就職したってことですよね?仕事早すぎませんか(笑)

黒人の良い兄ちゃんは実は潜入記者でこの病院の悪事を暴こうとしていたようですが、ソダーバーグって巨大企業とか組織とかに立ち向かう人の話ほんとに好きですよねw

それからジュノー・テンプル演じるヴァイオレットちゃんがかわいそすぎやしませんか。もう主人公からはずっと相手にされず、最後には良いように利用されて殺されちゃってるし。あまりに不憫だ…。

主人公を演じたクレア・フォイさんは初めて知ったけど、リース・ウィザスプーンに激似ですね。

そんなクレア・フォイ演じる主人公はなかなかの強気な女性でたくましかったですが、一番最初のシーンが、お客さんからの銀行の融資のお願い(?)を電話で断るところなんですよね。しかも電話の相手は女性らしい。これは間違いなくサム・ライミ監督の『スペル』ですよね。『スペル』は銀行員が老婆のお願いを断ることから怒りを買っておかしなことが起きていきます。この映画の主人公も『スペル』の彼女のように出世を意識している感じのシーンがありましたしね。

人を無下に扱うと災いが起こりますよという教訓にあらためて気が引き締まる思いです←