ユニーク・ブラボー・シネマ

ユニークさに欠ける凡人が、映画に溢れるユニークを味わいつくし喝采したい映画ブログ

『20センチュリー・ウーマン』感想(若干のネタバレ含む)

記念すべき1記事目は、Netflixで観たマイク・ミルズ監督作20センチュリー・ウーマン

あらすじ

1979年、カリフォルニア州サンタバーバラが舞台。シングルマザーのドロシアと思春期盛りの息子ジェイミーの暮らす家には、個性豊かな面々が間借りしており、不思議な組み合わせの一家のようなものを構成していた。元ヒッピーの中年男、パンクな女性写真家アビー、そして、ときどき家にやってくるジェイミーのかわいい幼馴染ジュリー。製図屋として働く男勝りなドロシアは、息子を独自の方法で育ててきたが、変化の兆しが見えだした15歳の息子を前に、自分の子育てに自信が持てなくなってくる。そうして、彼の傍にいる2人の違った女性アビーとジュリーに彼の教育係になってほしいと頼むのだった…

感想

今までマイク・ミルズ監督の映画は『サム・サッカー』『人生はビギナーズ』と観てきたけど、この映画が一番好きだし、何だか輝いて見えました。それもそのはずで、どうやら監督の半自伝的映画らしい。彼の少年期を支えた女性たちへの温かな視線が終始あって、心地良い余韻の残る映画だった。

元旦那が残した車が駐車場で燃えるシーンから始まる、唐突な見せ方もグッド。これから独自の物語が始まっていくんだという期待ができます。何か特別なことが起こるわけではないけど、一つ一つのエピソードに何とも言えない愛らしさと可笑しみがあるんですよねこの映画。基本的に、登場人物への視線が優しい。でもちょっとこいつ変だぞっていう雰囲気も出してるから、それが良いのです。

そして大事なのが1979年という時代背景。当時の人々の生活や流行りの音楽、時代の空気感をこれでもかってほどに画面に登場させながら、どこかへ向かおうとしている狭間感を演出します。

ビリー・クラダップ演じる便利屋の中年男は、昔、愛した女性に合わせてヒッピー生活を送っていたが、表面上では馴染めても、本当にはヒッピーにはなれなかったと吐露します。ヒッピーたちのボヘミアンな時代が終わり、かつてその空気を吸っていた男が、今も独り身で半分ヒッピーな感じを残しながら生きる。そうするとひとつ屋根の下ロマンス的なことも生まれるのか生まれないのか。ジェイミー君からは尊敬されず、女性陣からは全体的にポンコツ扱いされてる男だけど、それなりに女性からはモテるようです。ビリー・クラダップとても良い味出してました。

そして母親役を演じたのがアネット・ベニング。『華麗なる恋の舞台で』のアネット・ベニングが大好きで、彼女が出てると知ればなるべく観るようにしてる女優さんです。そういえば、『キッズ・オールライト』でもレズビアン女性を男勝りに演じてたけど、男勝りな雰囲気が似合う人ですね(あと『キッズ・オールライト』が好きな人はこの映画も好きかもしれない)。

アネット・ベニング演じるドロシアは40代でジェイミー君を生み、旦那と別れてから一度もデートをしてこなかったことを、ジェイミー君に不満がられます。お母さんが男と付き合うことを嫌がる息子ではなくて、お母さんが自分にばかり手を焼き、彼女自身の人生を生きてないことに不満がるって優しすぎませんかジェイミー君。ジェイミー君を演じたのはルーカス・ジェイド・ズマン君っていう子らしい。もう、この子が可愛いのなんの!15歳の割には幼くて、顔はまだ大人に全然なりきってないのに、性に関してはだんだんと目覚めてきたりしてさ。でも女ばかりに囲まれて育ってきたからフェミニスティック思考の強い子で、女性のことを理解しようと努めているという尊さ。こんな子なかなかいないぞ。小悪魔的女神エル・ファニングに恋してるけど、エル・ファニングには友達以上恋人未満で通されてて、またいじらしい。基本的にエル・ファニングが演じる女の子は自分のことしか考えてない子が多いから注意が必要だよと忠告してあげたい。

それからこの映画を観てて一番惚れ惚れしたのは、実は何よりインテリアの可愛さ!これが本当に死ぬほど可愛いのだ。ちょっとミニマルで、丸みを帯びた大きなランプとか、存在感あってすんごい可愛い。大きなランプは不自然なほどに意図的に画面に散りばめられていました。監督のこだわりですかね。当時実際ああいう感じのスタイルが流行ったんですかね。なんにしろ、部屋のインテリアの参考にしたいと思える可愛さが詰まっていたので、それも含めてまだ観てない人には観てもらいたい作品です。